二世帯住宅に係る小規模宅地等の特例の適用

5. 相続税の課税価格と税額の計算

二世帯住宅に係る小規模宅地等の特例の適用

 

いわゆる二世帯住宅で、構造上区分されている建物(各世帯の利用部分間で行き来ができない独立分離した建物)については、建物の登記形態をどのようにするかにより、相続税(居住用宅地等に係る小規模宅地等の減額の特例)の取扱いが異なるケースがあります。

 

親世帯と子世帯が独立して生活できるような、玄関が別で中で行き来ができないタイプの二世帯住宅は、お互いのプライバシーを守りつつ、できる範囲で支え合うことができ、近年このタイプの二世帯住宅が増えています。

 

今回は、建物の登記形態と小規模宅地等の特例の取扱いの関係について説明します。

 

 

平成25年度 税制改正による二世帯住宅の取扱いの改正

改正前の相続税の取扱いでは、親の土地に一棟の建物を建てて別生計の親世帯と子世帯が居住する場合、その居住スペースが区分され建物の構造上内部で行き来できない二世帯住宅については、それぞれ独立した建物と考えられ、その親世帯と子世帯は同居していないものされていました。

 

このため、被相続人の居住スペース以外の部分(子世帯の居住スペース)に対応する宅地等については、原則として被相続人の居住の用に供していた宅地等に該当しないものとされ、特定居住用宅地等に係る小規模宅地特例の適用が認められていませんでした。

 

しかし、平成25年度税制改正により、平成26年1月1日以降の相続においては、別生計の世帯で、中で行き来ができないタイプの二世帯住宅でも、その宅地の全体が「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」として、80%減額が認められることになりました。

 

ただし、区分所有登記がされている場合には、これまでと同様に親世帯の居住していた部分に対応する宅地部分しか特例の対象となりませんので、注意が必要です。

 

 

建物の登記形態による特例適用の取扱いの違い

構造上行き来ができない二世帯住宅の場合は、建物の登記の形態(共有登記・区分所有登記)によって小規模宅地等の特例の適用の取扱いが異なります。

 

登記の形態には単独所有登記、共同所有登記、区分所有登記があり、この登記形態が特例適用範囲のポイントとなります。

 

親と子が共に建築資金を出す場合は、共同所有登記にするか、中で行き来できない二世帯住宅の独立した部分ごとに区分所有登記とするかのどちらかの選択になると思います。

 

例えば、建築資金を親と子で半分ずつ出す前提では、共同所有の場合には親と子で持分を1/2ずつとして登記し、区分所有の場合には親が住む1階部分を親名義に、子が住む2階部分を子の名義にするという形態で登記します。

 

どちらの登記でも変わりはないように思われますが、相続税では共有登記の方が、小規模宅地等の特例の適用の点で有利になります。

 

区分所有登記の場合だと、仮に内部の行き来ができたとしても、親の居住用部分に対応する敷地のみが小規模宅地特例の対象となるからです。

 

先ほどの例では1階に対応する敷地だけが被相続人の居住用宅地等となることになります。

 

さらに、区分所有登記の二世帯住宅で親と別の区分に居住している子の場合は、その親の別居親族とみなされるため、配偶者以外の子などがその居住用宅地等を相続した場合は80%減額が受けられない可能性が生じます。

 

これは、区分所有登記されたということが、構造上及び利用上の独立が成立しているという所有者自身の意思表示がされたことだと捉えられるためです。

 

共有登記の場合は建物全体が親及び子の居住用建物に該当するため、敷地全体が親の居住用宅地等として小規模宅地等の特例の対象となります。

 

また、子は親の同居親族にも該当することになります。

 

敷地の全体を特例の対象とするには、建築の際に、建物の所有権を「親の単独所有」として登記するか、「親子の共有として登記」するのがよいでしょう。

 

すでに区分所有の登記がされている二世帯住宅にお住いの場合には、敷地全体を特例の対象とするために、子の持分を親が買いとる、もしくは子から親へ贈与することによって単独所有にすることが考えられます。

 

 

転勤による居所地の変更

二世帯住宅に住んでいた子世帯が、転勤などで家族全員が転居していた場合には、別居親族として取り扱われるため、転勤の間に親が亡くなると、親子同居とみなされず小規模宅地等の特例を受けられないことになります。

 

子が家族を残して転勤により単身赴任し、その家族が親世帯と同じ家に住んでいる場合は、同居親族とみなされ、特例の適用を受けることができます。

家族が引き続き親と同居していて、相続人である子が週末や連休などに家族のもとに帰るのであれば、相続人の生活の本拠は元の住所にあると判断されるためです。

ブログトップへ戻る