組織再編による事業承継対策の検討

コラム

組織再編による事業承継対策の検討

 

今回は組織再編を事業承継に利用する方法につき述べたいと思います。

 

相続税における株価評価は、評価する株式の発行会社を従業員数、総資産額及び取引金額により、大会社、中会社、小会社のいずれかに区分して、会社の規模に応じて、その区分ごとに類似業種比準価額方式もしくは純資産価額方式により評価するか、又は両方式を併用して評価します。

 

一般的に社歴が長く、業績が順調に推移している会社は、類似業種比準価額よりも純資産価額の株価が高い場合が多いといえ、また、会社規模が大きくなるほど類似業種比準価額のみで評価するか又は類似業種比準価額を用いる割合が大きくなります。

 

このような計算方法が財産評価基本通達に定められているため、例えば以下のような方法で非上場株式の評価額を引き下げる方法が考えられます。

 

 

合併

複数の会社を経営している経営者がいて、それらの会社の規模が小会社又は中会社であり、かつ類似業種比準価額よりも純資産価額が高い場合は、その複数の会社を合併して会社規模を大きくし、類似業種比準価額のみ又は類似業種比準価額を用いる割合を大きくすることにより株価を引き下げることが可能になります。

 

また、別のケースでは、複数の会社の株式を100%保有している経営者がいて、一方の会社は順調に発展しており資産・利益ともに毎期増大しているが、もう一方の会社は税務上の欠損金が多額に発生しており、純資産もマイナスという場合には、それらの会社を合併すると、純資産の金額が減少することで非上場株式の評価額を引き下げられるうえ、繰越欠損金を活用することで法人税の節税にもなります。

 

 

分割型分割

会社に複数の事業部門があり、2人の子供がそれぞれの部門を後継者として承継することが見込まれている場合は、先代経営者が生前に分割型分割を実行して、事業部門を別会社として切り離しておき、それぞれの会社の株式を後継者となる者に引継がせる方法は経営目的に沿った組織再編の事例といえます。

 

 

株式移転

株式移転を利用して複数の会社を別会社として残しながらホールディングカンパニーを設立することも可能です。

ホールディングカンパニーを設立しないで複数の会社の株式をそれぞれ引継がせることも可能ですが、傘下の企業に個々の事業を任せたうえで、ホールディングスはグループ全体の意思決定に特化することで、経営の迅速化が図れ、効率的な会社運営が可能となります。

税制上、100%持株会社であればグループ法人税制が採用され、子会社からの受取配当金は全額益金不算入となること等の税制上のメリットもあります。

 

 

税務上のリスク

組織再編を利用した事業承継には、税務上のリスクもあります。

経営目的がなく、税金の負担を不当に減少させるためだけの組織再編の場合、税務署に組織再編があったことを否認される可能性があります。

また、組織再編後において会社の業績や利益、配当等が大きく変化し、再編前後の会社実態に変化があると認められた場合には、類似業種比準価額の計算の際に、会社の1株当たりの類似配当金額等の計算における配当・利益・純資産の各要素が適切に把握できないことがあります。

 

組織再編前後において会社実態に変化があり財産評価基本通達により評価することが著しく不適当であると認められる場合には、国税庁長官の指示を受けて評価される可能性があります。

会社の将来の収益性にもかかわってくるため組織再編を節税目的のみのために利用することはおすすめできません。

 

 

まとめ

経営上の戦略の一環として組織再編を利用し、その結果節税にもなるということであれば選択肢の1つとして考えられるものだと思います。

 

事業承継の際には、今ある会社の形をどう引継がせるかということに固執することなく、組織再編も視野に入れて会社をベストな形で引継がせることをお考えになられてはいかがでしょうか。

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